Water
2013.07.24 橋本 淳司
上の絵は中国にある「北京節水展館」に展示されていた、節水を普及啓発する絵です。「自分のおしっこを再生して飲む赤ちゃん」。数年前にこの絵を見たとき、気味悪さやおそろしさを感じたことをいまでもはっきりと覚えています。
でも、もしかすると、この絵は水問題を解決するヒントを教えてくれたのかもしれないと思い直しています。
世界的に懸念されている水不足を解消するには3R(節水、水の再利用、水の再生利用)が必要だと言われていますが、人間はそもそも体のなかで水の再生利用をしています。飲んだ水は体中をめぐって最後は尿となって出ていきます。総量はその日の活動や天候によって変わりますが、1日1~2リットルとされています。ですが体内には、老廃物を運んできた水を処理し、きれいな水をつくっている再生工場があります。腎臓は、体内の老廃物を運んできた水を処理し、成人の場合で1日約190リットルの水が再生されています。
宇宙空間では、尿の再生利用はすでに行われています。国際宇宙ステーションで1人が1日に使える水は約25リットルです。国際宇宙ステーションのトイレでは、掃除機のホースのような管で尿を吸いとります。吸いとった尿を再処理して飲み水や実験用の水として使います。
そんななか、人体から出たもう1つの水分である汗を再生利用する技術ができました(写真)。
スウェーデンのデザイナー、アンドレアス・ハマーさんが、運動したあとのシャツから絞り出した汗を、飲料水に変える「スウェット・マシン」を開発したのです。ハマーさんは、宇宙飛行士が宇宙空間で過ごす様子から、この技術の着想を得たそうです。
このマシンには、スウェーデン王立工科大学で開発された最新のフィルター技術が使用されています。
マシンが汗を飲料水に変えるプロセスは、まず、汗まみれの衣服を脱水機に入れ、回転させたり絞ったりして汗を取り出します。次に、汗に紫外線を照射して殺菌し、開発されたフィルターでろ過して塩分などを取り除きます。
できた水は水質基準を満たし、安全に飲むことができます。ただし、実用というよりも、水問題を普及啓発するためにつくられたようです。世界的には都市の下水再生利用などが進み大型のプラントが普及していますが、大量のエネルギーを使用するという課題が残っています。この技術は、水の再生を身近なところで小規模に行うことを私たちに教えてくれているような気がしています。
関連するURL/媒体
http://www.bbc.co.uk/news/technology-23360907