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Water

日本科学未来館で「新しいトイレのかたち」を考える企画展

2014.07.02 橋本 淳司


あなたは、「トイレ」と聞いてどんなことを思うでしょう?

子どものとき、「入ると恥ずかしいから学校では絶対にいかない」なんて思ったでしょうか?

「一人になれてほっとする」なんて思ったこともありますか?

トイレによって私たちは、衛生的で快適な生活が送れるようになりました。いまやあたたかい便座に腰を下ろし、排泄物の姿を見ることもなく、毎日を送れます。ちょうどよい温度のお湯でお尻を洗ってもらっている人もいるでしょう。

でも、地球全体を見渡せば、トイレのおかげで衛生的かつ快適な生活が送れる人はごく一握り。トイレを利用できない人は世界で約25億人。途上国では人口の4分の1が屋外で排せつ行為を行っています。

でも野外で排泄すると、飲み水として利用する水源を汚してしまいます。女性にとっては別の問題もあります。女性はプライバシーを保つ場所がないと用を足すことができません。自然と外出に消極的になり、学校に行けない少女も多いのです。

そこで、これまでにないトイレのアイデアが必要なのです。

この夏「日本科学未来館」で行われる「トイレ? 行っトイレ!〜ボクらのうんちと地球のみらい」(2014年7月2日〜10月5日)は、『子供の科学』誌とコラボレーションし、トイレのアイデアを募集しています。

たとえば、水不足の地域でもつかえるトイレ、ウンチやオシッコを活用できるトイレ、いままでにない形をしたトイレなど、体の不自由な人に使いやすいトイレなどなど。じつはトイレのイノベーションは世界中で進行中なのです。

【排泄物処理のイノベーション】

発展途上国では、下水道が整備されていないところが多く、ウンチやオシッコが未処理の状態で川に流れ、病気が蔓延(まんえん)する原因となっています。

そこで下水道がなくても衛生的なトイレが考え出されました。ウンチとオシッコを分けて集め、再利用するというのが基本的な考え。栄養分の多い尿は薄めると液体肥料になります。ウンチは灰をかけて半年程度かけて衛生化するとたい肥になります。ウンチやオシッコを安全な形で大地に返して植物が活用します。

このトイレができたことで、衛生的で感染症が減る、肥料がとれて収穫が増える、化学肥料や農薬を買う支出が抑えられる、と一石三鳥。邪魔者と考えられていたウンチやオシッコが、「肥料にする」→「植物を育てる」→「人間が食べる」というサイクルのなかで活用されるようになります。

【トイレの形状のイノベーション】

平安時代、貴族のお姫様は、着物を何枚も重ね着する「十二単(ひとえ)」ですごし、髪は自分の背丈より長かったのです。お姫様は「桶箱」といわれるポータブルトイレを使っていました。桶箱は木製で、中には砂や灰を入れて消臭効果をねらっていました。

かつてヨーロッパでは椅子型のトイレが使われていました。ふだんは部屋の中で椅子として使用し、いざというときにはトイレになりました。

じつはポータブルトイレは現在も活躍しています。家庭で介護が必要な人が使用するトイレがそれ。機能面でも数々の工夫が凝らされています。たとえばワンタッチでひじ掛けの上げ下ろしができるからベッドからトイレへの移動が楽。トイレのフタはバネの力を利用して、少ない力で開けられます。

災害時にもポータブルトイレは活躍します。東日本大震災直後、被災地のトイレ環境は悪く、停電の続く地域では仮設トイレに行くことを不安に思う人も多かったのです。現在では小さな子どもをもつお母さんたちを中心にポータブルトイレを備えるようになっています。

【空間のイノベーション】

茶道を確立した千利休はおもてなしの達人でしたが、トイレにもこだわりました。利休が豊臣秀吉のために考えたとされるのは砂雪隠(せっちん)。砂と石で石庭のような美しさを楽しむことができました。

さて、現代でも快適さと機能性の両面からトイレの空間デザインは進化し続けています。学校のトイレ空間も明るくて気持ちいい、入るのが楽しいものになってきました。大きな鏡を置いたり、荷物を置く台がそなえられていたり、壁や床面の色づかいもきれいになっています。

公共スペースにある多目的トイレは、多くの人が使えるような機能面での工夫が。赤ちゃんを連れたお母さんやお父さん、体の不自由な人のことも配慮して、みんなに気持ちよく使ってもらえる工夫がたくさん詰まっています。

このようにトイレのイノベーションはいろいろな観点から行うことができそうです。ぜひ、応募用紙をダウンロードして、これまでにないトイレを考えてみては?(締め切りは7月30日)。優秀作品は、「トイレ? 行っトイレ!〜ボクらのうんちと地球のみらい」(2014年7月2日〜10月5日)で展示されます。

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