Water
2015.07.23 岩井 光子
8月1日は水の日だそうです。自分の生活圏を流れる身近な川が今、どんな水質なのか、興味を持ったことはあるでしょうか?
水の汚れ具合は簡易キットを使った水質検査で調べることができます。pH(水素イオン濃度)やCOD(化学的酸素消費量)、DO(溶存酸素)などを定期的・継続的にチェックすることで、生活排水などに由来する有機物汚染がないかどうかをみることができるのです。水質検査は主に行政の担当機関や大学の研究室、環境団体などが行っており、一般の人々にはピンと来ないかもしれませんが、指標の目安さえわかれば川の健康状態がひと目でわかる便利なデータです。前日にたくさん雨が降ったなどといった気象状況も加味されますが、例えばCODが6以上であれば「汚染が目立つ水」という判定になります。
川から水を採取し、変化の色合いを標準色と比較してCOD値を判定(野川で)
これまでこうした調査結果が広く公開される機会はなかなかありませんでしたが、私たちが日頃みんなに知らせたいことをSNSで発信するのと同じようにパソコン、あるいはiPhoneやAndroid携帯から気軽に投稿できるようにしたツールが、名古屋のClearWaterProjectが2013年に開発したAQMAP(アクマップ)です。アプリをダウンロードして個人アカウントを作れば、調査地のpHやCOD値を記入できるほか、撮った写真を好きなだけアップロードでき、コメントを添えることもできます。
グループタグを作れば、AQMAPはグループ内で情報をシェアするのにも便利。7月11日に三鷹市で行われたウォーターリテラシーオープンフォーラムの野川水質調査でも、結果はすぐさまアップ。調査直後の振り返りで活用できました
これまでAQMAPにアップされたデータは全国各地の2757件(7月現在)。投稿されたポイントは、COD値によって水色(0〜3ミリグラム/リットル)、黄色(3〜6ミリグラム/リットル)、赤(6ミリグラム/リットル以上)に色分けされる他、CODの記入がない場合には、遊びたいと思うかといった主観的な指標で同様に色分けされます。これによって川であれば上流から下流までの流域を見渡したとき、どの辺りから汚れているのかが明らかになってきます。
各地のモニタリング結果を「見える化」したことで、市民が河川管理者と協力してきれいな水辺をよみがえらせる試みも出てきていると言います。例えば、愛知県豊田市の岩本川では、土砂がたい積した川の再生に住民が日曜大工的に取り組む「小さな自然再生」が盛り上がりを見せています。こうした草の根活動の資金面でのバックアップは、ClearWaterProjectがクラウドファンディングの立ち上げやスポンサー獲得をサポートする「カワサポ」を通じて行われています。
AQMAPでとりわけ制作者の個性が表れていると思うのは、入力フォーム冒頭で「遊びたい水辺かどうか?」の問いかけに、「そう思う」「そう思わない」と率直な印象で答えるところ。現在の水辺が魅力的かどうかを最も端的に聞き出すと同時に、今後どういった水辺を子どもたちに残していきたいかをイメージさせるきっかけにもなると思いました。誰もが自由に参加できるAQMAPの投稿ページではアップされた観察コメントに対し、かつての水辺を知る人から貴重な声が寄せられることも。時間や市町村の境界線を越えてひとつの川について語り合う「流域」という新しいコミュニティの枠組みも意識させてくれる興味深いITツールなのです。
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