Water
2010.04.05 橋本 淳司
Blasting was Constant at Xiaowan Dam Site:Creative Commons,Some Rights Reserved,Photo by International Rivers
メコン川の水位が数十年ぶりの低さとなり、流域諸国の緊張が高まっています。タイなど下流域の国では、「中国が上流に造ったダムが異常渇水の原因」と見ていますが、これに対して中国側は、「メコン川支流の低水位はタイ北部やラオスの干ばつによるもので、中国西南地区の雲南省でも60年ぶりの大干ばつに見舞われている」「上流のダムは持続可能な発展戦略を実施し、下流各国の利益を十分配慮している」と否定しています。
中国は「メコン川の水資源を合理的に開発、利用することは下流各国にも利益がある」と繰り返し主張していますが、下流国の疑念は払しょくできていません。そのため中国政府は3月下旬からダムの保水情報を開示していますが、環境保護団体などは「最近の情報を公開しても無意味。20年前にさかのぼって推移を明らかにすべきだ」と指摘しています。
カンボジア・タイ・ベトナム・ラオスの4カ国政府によって構成されるメコン川委員会は中国の発表に是正を求めながらも、「渇水は中国のダムだけが原因とはいえない。降雨量不足、流域の人口増加、農業・観光開発、気候の変化なども影響しているはず」などと多角的な見方も示すなど、これ以上の緊張の高まりを防ごうという配慮を示しています。
そうした議論をしている間にも、事態はますます悪化すると見られています。メコン川は例年5月までは水位が低下していくことから、渇水は深刻化し、農業・漁業に悪影響を与える恐れがあります。カンボジアなどでは動物たんぱく質の80%を淡水魚から摂取しているとされ、漁獲高の低下が飢饉(ききん)につながる可能性もあります。
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