FabLab。私が初めてこの言葉を聞いた時、「どんな意味だろう?」と不思議に思いました。FabLab(以下、ファブラボ)は、Fabrication Laboratory(製作のための研究室)とFabulous Laboratory(素晴らしい研究室)を合わせてつくられた造語で、今、世界中で3Dプリンタやレーザーカッターなどのデジタル工作機械が揃い人が集う実験工房、ファブラボが急速に広がっています。
現代の私たちの生活はものにあふれ、必要なものはなんでも手に入ることで、いつしか「ものづくり」することを忘れてしまったように感じます。でも本来「ものづくり」は人間の基本的な欲求の一つであり、「つくる」行為から人はたくさんのことを学びます。
ものづくり大国である日本が、ファブラボを通じて、もう一度「ものづくり」の楽しさを思い出した時、日本古来の伝統文化と先端テクノロジーが融合し、新しい文化が生まれる可能性を秘めているのではないでしょうか。
そこでファブラボのことをもっと詳しく知るために、ファブラボ鎌倉のディレクター、渡辺ゆうかさんに会いに行ってきました。
(Text by Miwako Sasao)
目次へ移動 伝統とテクノロジーが同居した空間「結の蔵」
鎌倉駅の改札を出ると、観光に来た人で賑わう道があります。そこからくるりと向きを変えて、駅の地下道を抜けて歩いてゆくとファブラボ鎌倉の拠点である「結の蔵」がすっと静かに立っていました。 この「結の蔵」は、125年前に立てられた酒蔵で、2004年に秋田から鎌倉市に移築されたものです。日本古来の伝統工法によって一度酒蔵を分解、輸送して再度組み立てられました。土壁の土も、わざわざ秋田から持ってきて発酵させたものを使っているというから驚きです。ラボのスペース以外は住居になっていて、実際にここで暮らしている人たちもいます。
蔵の中に一歩足を踏み込むと、ひんやりと冷たい空気の中、「キューイン・キューイン・カシャン!」と機械音が一定のリズムを刻んでいました。昔の酒蔵の中に、3Dプリンターやレーザーカッターなど最新のデジタル工作機械が並ぶ風景。一見ミスマッチな組み合わせが妙にカッコよく、奥へと吸い寄せられていきます。一体ここで何が行われているのでしょうか。
不思議そうに機械を眺めていると、奥から笑顔で迎えてくれたのは、ファブラボ鎌倉のディレクター 渡辺ゆうかさん。初めてトークイベントでお会いした時、凛とした佇まいがとても印象的で、お話から仕事に対する情熱が伝わってきました。
目次へ移動 自分がほしいものは自分でつくるという発想
ファブラボとは、マサチューセッツ工科大学(MIT)のニール・ガーシェンフェルド教授が提唱した「個人による自由なものづくりの可能性を広げるための実験工房」。簡単に言うと、3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル工作機械が使えて、世界中にあるファブラボのネットワークと繋がり、ラボに来た人は誰でもものづくりができるオープンな施設です。
2002年にスタートしたファブラボは、今では50カ国200カ所以上、先進国、途上国問わず草の根的に世界中に広がっています。日本にファブラボが誕生したのは2011年。東アジアでも初となる「ファブラボ鎌倉」と「ファブラボ筑波」が誕生しました。日本国内ではその他に、渋谷、仙台、関内、北加賀屋、大分の計7箇所にファブラボがあり(2014年1月時点)、今後も北海道から沖縄まで、着々とオープンの準備が進められています。
ファブラボでつくられるものは実に様々で、自分の好きなキャラクターのフィギュアや自分の身体にぴったりのリュックサックなど。大型の工作機械を揃えるスペインのファブラボではなんと家までつくられています。「(ほぼ)なんでもつくる」ファブラボの誕生で、自分のアイデアを形にすることが簡単にできるようになりました。その結果、ちょっと変わった「もの」が生みだされています。
例えば、ニール・ガーシェンフェルドの講座「ほぼなんでもつくる方法(How to Make Anything)」の授業を受けた女性がつくった「スクリーム・ボディ」は、とても面白い作品です。「人ゴミの中にいると、急に大きな声で叫びたくなる」という変わった悩みを持っていた彼女は、防音を施した大きなカバンに向かって思いっきり叫び、録音しておいた叫びを人がいなくなった場所でリリースできるバックを製作したのです。
自分だったらファブラボでどんな面白いものをつくろうかと考えてみると、いつも右に首をかしげてしまう癖を直すネックホルダーや、しゃっくり止め専用の水飲みコップ・・・つくってみたいものがいくつも思い浮かびました。大量生産が前提の製造業では、こういった個人的欲求を満たすものは、たくさんの人のニーズが無いとつくれません。ほしいものは自分でつくる。そんなシンプルな理由から、ファブラボでは普通の人がデジタル工作機械の使い方を覚え、技術を活用し、ものづくりを始めています。
実際、ファブラボ鎌倉で工作機械を使っているところを見せてもらうと、コンピューター上のデジタルデータに加工を施して、即座に実体として出てくるスピートの早さに驚きます。さっきまでPC上にデータがあるだけだったのに、突然カラダを持って生まれてくる、そんな感覚でした。
目次へ移動 地域によって個性が変わるファブラボの魅力
どうして最初のファブラボを鎌倉につくることにしたのでしょうか?
「ファブラボは地域に根付いていく役割を担っているからこそ、地域性が色濃く反映されたラボのあり方がとても重要になります。日本で初めてファブラボをつくろうとした時、後からつづくラボが地域の特色が色濃く反映され、オリジナリティを出していくきっかけにする必要がありました。ひとつの紋切り型のモデルが日本に広がっていくのは、あまり面白くないですから。そして日本の歴史的文脈もほしい。やはりその国の、その土地の文化が感じられる場所は魅力的なんです。場所の持つ力は、後からつくることができません。そこで、都心からそれほど遠くなく、歴史的文脈と文化的文脈を合わせ持つ鎌倉を選びました」
渡辺さんは、鎌倉だからこそ、チャレンジできることがあると考えています。
「これからいろんな場所にファブラボが生まれてくると思います。その時、ファブラボ鎌倉はどうあるべきか、ということをいつも考えながら動いています。鎌倉の周辺環境を考えると自宅や小学校が近く、都心からちょっと離れた郊外。通勤圏内ではありますが地方都市の人口約17万人の規模です。超高齢化社会をむかえるからこそ、地域はもっと面白くなっていければと思うんです。日本にいる団塊の世代の人は身近にものづくりに触れて育った方たちで、スキルもものすごくあります。でも今の状況だと、引退した後に行き場がない。それって素晴らしい資源が眠っていることだなぁと感じています。もし、今後高齢化対策をするならデイケアセンターじゃなくて、ファブラボに来てもらって、手や頭を使いながら、商品開発をしてもらえたらいいですよね。何かを開発する時、気持ちの余裕や遊び心がないと辿りつけない領域があります。そこでは、時間もお金もちょっと余裕があるアクティブシニア層の力は絶大です。そして、やる気のある若者や職人、エンジニア、海外の方々と一緒に成長できる。ファブラボはそんな場所になれると思っています」
地域によって様々なカラー(特色)を持つファブラボ。じゃあ、デジタル工作機械さえ用意すれば、どこでもファブラボになれるのか、というと、そうではありません。ファブラボと名乗るためにはいくつかの条件があり、ウェブサイトに詳しく明記されています。
http://fablabjapan.org/whatsfablab/
「地域のラボであり、世界とつながるラボである」
言葉で言うのは簡単ですが、それを体現することは、とても難しいことです。同じ工作機械 (3Dプリンタやレーザーカッターなど)を設置しても、その国や土地の文化・情勢よってニーズは全く違います。先進国では趣味や学びのためのものづくりが中心ですが、途上国では、まず生活に必要なものをつくることが優先です。
とはいえ、世界中どこのラボに行っても根底に流れているのは「個人による発明を可能にする」ということ。ニーズは違っていても、それぞれの場所でファブラボの存在は個人と社会に確実に変化を起こしています。
ファブラボを通じて、パーソナル・ファブリケーション(個人のものづくり)が身近になり、WEB上でモノのデータ、ノウハウを、国内外の多くの人と共有できるようになりました。
さらにモノのデータを誰もが物質化できることで、実社会とネット社会を行き来しながら、人と人、地域と地域が「つくる」ことを通じてつながり、成長する新しいコミュニケーションのあり方、「ソーシャル・ファブリケーション」が世界中に広がっています。
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おもてなしをしない、おもてなし
渡辺さんはファブラボ鎌倉には3つの役割があると定義しています。
1 Community Lab(コミュニティラボ)
2 Research Lab(リサーチラボ)
3 Incubation Lab(インキュベーションラボ)
「まずはコミュニティをつくろうと、1年かけてやってきました。その次に、集まる方々、コミュニティの特性をリサーチをしています。実施するプログラムによって来る層が違います。ファブラボ鎌倉に通う期間、その方々がどのように変化するのかも記録しています。昨年から、本格的に企業や自治体と連携して次の時代を見据えた人材育成や場、「学び」のあり方、ビジネスとして取組む活動にも着手しています」
ビジネス展開とは、ラボを存続させていくために必要な家賃や人件費などの経費をちゃんと確保する、ということです。車をつくってもガソリンがないと動かないように、ファブラボの活動も資金がないと継続できません。
ファブラボ鎌倉では2013年の6月から、「朝ファブ」と呼ぶ、ちょっと変わったオープンラボの形式をとっています。それは、月曜の朝9時に集合して「結の蔵」を掃除した人が、その後ラボを自由に使えるというシステムです。
月曜の朝9時に来れる方と限定したことで、自然と情報感度が高く、何かを得ようと意識を持った方が来るシステムになっています。今では、3Dモデリングが趣味のおじいさま、美術系の学校を卒業した主婦、多感な小学生などのリピーター層に加え、初めての人もコンスタントに来ているそうです。
「朝ファブ」のポイントは、スタッフはあえて何もしないことだと渡辺さんは言います。スタッフが何もしなくても、掃除という作業を通して、リピーターの方と初めて来た参加者の関係がフラットになり、自然とコミュニケーションが生まれます。また、何度も通って技術を習得した人は、レーザーカッターなどの工作機械の使い方を教える人になります。身につけたスキルを自覚できるようにバッヂを渡し、参加者ができることを誰もがわかるように見える化しています。それが自信に繋がり、初めて来た人の先生となり、どんどん成長し、自然と自分の居場所だと思ってもらえることに成功したそうです。
ただ、最初から今のように運用していたわけではありません。みんなが通いやすい土曜日にオープンラボを設置したり、黒板に直接予約を書きに来てもらうシステムを試してみたり、試行錯誤を重ねて今の「朝ファブ」の運用システムに辿り着きました。
「最初は私もおもてなしをしちゃっていたんです。でも、そうするとゲスト(教えてもらう側)とホスト(教える側)の関係になってしまいます。それに『ここは自分の場所ですよ。意識して下さい!』と言っても無理ですよね。ゲストの人が普通にご飯を食べたり、掃除をしたりすることで、ここは自分の場所だと自分で感じてもらうしかないんです。私はおもてなしをしないことに慣れるまで、1年かかりました」
ファブラボ鎌倉の各機材の講習会を終えた人は、蔵部(クラブ)会員になります。あとは、FamilyFABという家族向けのプログラムも実施しています。そこで小学校1年生の女の子が、妹の誕生日のためにレーザーカッターでパズルをつくったりしています。誰にも教わらずに、レーザーカッターの三面図を書いたりしているのですから、驚きです。
「何かを学ぼう」ということではなく「自分でつくれるようになりたい」「誰かのために何かをしたい」という気持ちがものづくりをする一番シンプルな理由かもしれません。
目次へ移動 ファブラボとの出会い
渡辺さんがファブラボ鎌倉を立ち上げることになったきっかけを伺うと、アメリカでの経験がとても大きかったようです。
渡辺さんは高校卒業後渡米し、米国カリフォルニア州サンフランシスコ郊外にあるコミュニティカレッジに通っていました。クラスメイトには目が見えない人、戦火を逃れて来た移民の人、ヒッピー、芸術的な活動をする人など。先生も健常者のみならず下半身不随の方も教鞭をとっていました。そうした多様な人たちがあたりまえのように一緒に学んでいて、多様性とはこういうことだと実感したそうです。そこで、「あなたは何を学びにきたの?」と聞かれて、「英語を学びにきました!」と答えたら、「それじゃ答えにならないよ」と言われてしまったそうです。それから「自分は何を学びたいか」ということを考え、全米を電車で一周したりと様々な行動を起していきます。
「私の中では、日本というものを問い直している最中なので、今も日本に留学している気分なんですね。日本の面白いポイント、日本らしさはちょっと離れてみないとわからない。ということが離れてよく分かりました」
アメリカから戻ってきた渡辺さんは、多摩美術大学の環境デザイン学科へ進学。在学中は「みかんぐみ」という建築事務所で越後妻有のアートプロジェクトを手伝ったり、横浜のバンクアートのハンガートンネルをつくったりと忙しい日々を送ります。卒業後、都市計画事務所、デザイン事務所で修行している最中に、交通事故にあい、長期リハビリを余儀なくされ仕事ができなくなってしまいます。ぽっかりと空いた時間に渡辺さんが何をしたかというと、今までやらなかったことをやってみようと、哲学や古典などジャンルを問わず100冊以上の本を読みあさり、300本もの映画を観ました。普通なら怪我で仕事ができなくてリハビリも大変だったであろう時間を、渡辺さんは「ご褒美の時間」だったと語ります。
そして2010年。社会復帰しはじめた頃、WEBライターとして取材に行った「世界を変えるデザイン展」でファブラボの活動を初めて知ることになります。一週間考え、FabLab Japan発起人で慶應義塾大学の田中浩也先生にコンタクトをとります。MITで修行をしていた田中先生とゆっくり話をした時、ファブラボのコンセプトは「(ほぼ)何でもつくれること」と聞いて、思わず「それでは、ファブラボで新たなクリエイターのしごとのあり方もつくれますかね?」と質問をぶつけました。その一言から渡辺さんは田中先生と一緒にファブラボ鎌倉を立上げることになります。
目次へ移動 自分の仕事は自分でつくる
自ら思いついたチャレンジに向かいはじめる渡辺さん。ファブラボ鎌倉ではどんな仕事をしているのでしょうか。
「私のここでの役割は、人をつなげ新しい価値を社会にきちんと届けることです。例えば、ある会社の企画部の方と一緒に企画してどういうワークショップをやるかとか、実施するためにはどんな人を配置して、どうプロジェクトをまわしていくか全体を考える、いわばプロジェクトマネージメントがメインです」
渡辺さんは、鎌倉で培ったノウハウや人脈を活かし、まちづくりや地域活性化プロジェクトの経験をもとに、企業や自治体、地域の方々とプロジェクトを立ち上げていきます。鎌倉の職人さんや大工さんたちと対話を重ね、新しい商品やプログラム、サービスを生み出し、プロジェクトをより良くファシリテートしていくことがとても大切だと考えています。富士山と鎌倉を舞台に、「フジモックフェス」という間伐材を使用した半年のものづくりプログラムでは、ホールアース研究所と若手きこりの方々と連携して開催しています。日々、ファブラボ鎌倉の可能性を広げています。
お話を聞く前はファブラボは「これまでにない新しい働き方ができる場所」だと思っていましたが、それは違いました。
「ファブラボ鎌倉で働くためには、『ここで働きたい』というよりも『ここで自分の◯◯な仕事をつくりたい』というビジョンを持ったマインドの人じゃないと難しい。でも、そういう人のプラットフォームになる可能性はすごくあると思っています。だから、その下地をつくることが今の私の仕事です。どうしても最初はサポートやプログラムの力でステップアップする段階が必要ですし、相談できる人がいることも大切です。ここで培ったノウハウを鎌倉だけのモデルにしてはあまり意味がありません。アートプロジェクトしかり、地域活性しかり、外部の人が何かやろうとしても、住んでいる人が本気じゃないとイベントで終わってしまうので、そこは注意しています」
渡辺さんの話を聞いていると、「どんなことでも、まずやってみる」という意志を強く感じます。「失敗してもそれが教訓になれば、それは失敗ではない」と考えているからこそ、面白そう! と思ったら迷わずチャレンジし続けられているのではないかと思いました。
目次へ移動 不確定な未来を生きるために
立ち上げから2年目、ファブラボ鎌倉の方向性を決定づける体験がありました。そのきっかけは、ニュージーランドで行われたファブラボ国際会議。世界で学びの現場がガラリと変わっていることを目の当たりにした渡辺さんは、帰国後ファブラボ鎌倉の方向性を「学び」へと変更しました。
「今、世界の小学校では、動機付けと、課題があった時に解決する能力を鍛えるということがセットで考えられています。そこで、『問う』力がすごく重要になってきています。これからの未来は、どんな問題が起るかわからない。予測できない未来に対応するには、問題解決する手法を身につけておかないといけない。その手法に社会的インパクトがあれば、それが仕事になって、社会的イノベーションが起こる。実際、こういった教育を、たとえばアメリカでは国策としてすでに始めています」
それに対して、日本は予測される未来のシナリオを書いて、それに基づいて何かを学んだり、覚えたりする教育をしています。渡辺さんは日本も今の教育の考え方を変えないと、今後先進国としてあり続けるのは難しい、と危機感を持っています。そしてこの問題は小学校に限ったことではありません。大人になった社会人やクリエイター、大学生にもいえることだと言います。
「私たちは実は、学び方を学んでいない。ということに気づいたんです。受身で教えてもらうことに慣れてしまうと、学び方自体を知ることができない。これは本の読み方と一緒です。文字さえ読めれば本は読めるけど、本の読み方には色々な方法があるんです」
ファブラボ鎌倉は21世紀の「読み・書き・そろばん」として、「WEB・FAB・Presentation」を挙げています。アイデアをカタチに落としこむ、実装する、情報発信してまわりに共有する、こういった技術を習得して、問題解決するための方法論を身につけることが大切です。問う力を訓練するためにも、ものづくりはとても有効だと言います。自分でつくってみると、問題を解決しないと機械が動かなかったり、時にはつくったものが壊れたりと、予測していなかったことが起こります。ものづくりの過程は明確な課題設定があって、それに対してどうすればいいか考えるいい教材になるのだと渡辺さんは考えています。
学びの要素として、「好き」かどうかということも、すごく大切だと言います。
「小学生の頃に、夢中になってしまったすごく楽しかったことって、その人の根源的な適正と繋がっていると思うんです。夏休みの何もしなくていい自由な時間に何をするか、それは放っておいても、時間と労力を惜しまず、自然にやってしまうことです。それはその人の才能です。才能を見つけるのが本当の学び。学びはよりよく生きるため、コミュニケーションするため、自分を知るためのツールでしかないのです。だから学びのための学びにならないようにいつも気をつけています」
自分の成長は目に見えないけど、学んで変わっていった姿は、まわりの人が気づくものです。渡辺さんはむしろ、「自分の成長はまわりしかわからなくてもいい」と断言しています。ファブラボはいろんな人が集まってものづくりをすることで、一人では気づけなかった自分の成長や個性に気づくことができます。国内外200箇所に広がるネットワークを使えば、世界中の人からアイデアや情報をもらうことだって可能です。それは、決して一人で行うものづくりの過程ではできなかったことです。楽しく学ぶ方法にいち早く気づき始めた人たちが、ファブラボに集まっています。
参考サイト:
ファブラボ鎌倉(http://www.fablabkamakura.com/)
FabLab Japan(http://fablabjapan.org/)
参考文献:
『FabLife デジタルファブリケーションからうまれる「つくりかたの未来」』
( オライリージャパン 著:田中浩也)
「FabLabがものづくりをイノベートする」
(季刊 政策・経営研究 2013 vol.3 著:渡辺ゆうか)
取材・文:笹尾実和子(Think the Earth)
写真:関根茉帆(Think the Earth)
編集:上田壮一(Think the Earth)