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こぼれ話 |
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中国のクマたちの悲惨な日々
2004/11/07 19:20 37 (GMT)
Cool Chai@アジア
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この秋、日本ではクマが色々とニュースを騒がせているようですが、中国では先日、こんなショッキングなニュースが報道されました。中国『遼瀋晩報』によると、このほど、唐山市の動物園から行方不明になっていたツキノワグマが生きた姿で発見されたのですが、なんと、四本の「手」が全て切断されていたそうです。
このクマは、四年前、吉林省で密猟者によって捕獲された四頭のうちの一頭でした。クマたちは、広東へ運ばれる途中、河北省当局の摘発を受けて保護されましたが、一頭は既に死亡しており、残りの三頭は唐山市の動物園で飼育されることになりました。ところが、唐山市の動物園に移送された後、姿を消してしまったのです。そして、つい最近、その内の一頭が遼寧省撫順市の労働公園で発見されたのですが、四本の手は切断されていました。「遼瀋晩報」の取材によると、このクマは手を切断された後、唐山市から撫順市に転売されたようですが、誰が「手」を切断したのか、残りの二頭の行方はなど、詳しい経緯はまだわかっていないようです。
中国語の新聞には、「手」は「掌」と書かれています。つまり、切断されたのは手首から先の部分のことで、これは、「クマの手(熊掌)」が中華料理の高級食材として取引きされているからです。おそらく、切断された手は、食材として売られたのでしょう。それだけでもショッキングですが、この事件の裏にはもう一つ、「クマの胆(熊膽)」が高価で取引される漢方薬であるという根深い問題があります。日本でも、「熊の胆」は漢方薬として古くから用いられていますが、どうやって「胆」をとるのか、御存知ですか?
「熊の胆」は、何千年も前から鎮痛・解熱などの薬として使われていて、従来は殺したクマから胆のうを取り出すやり方で採集されてきました。しかし、二十年程前に、もっと効率的に胆汁を採取でき、しかもクマを殺さずにすむ「画期的な」方法が開発されたのです。それが、生きたクマの胆のうに直接チューブを入れ、一日二回胆汁を抜き取る方法でした。その結果、殺害される中国のクマの数は減りましたが、反対に捕獲されたクマたちは死ぬまで拷問のような苦しみを受け続けることになりました。
「中国のクマ救出/China Bear Rescue」キャンペーンを行っている「アジア動物基金/Animals Asia Foundation(以下、AAF)によると、現在、中国には胆汁採取を目的とする「クマ牧場」が200以上あり、7000頭以上のクマが飼育されているそうです。クマたちは幼い頃から身動き出来ないような狭い檻に閉じこめられ、胆のうに直接管を差し込まれ、毎日二回胆汁を絞り取られます。胆汁採集は激痛を伴う上、多くの檻は陽も射さないような暗い場所にあるそうで、AAFは「拷問室のようだ」と表現しています。
AAFは、香港に本拠地を置く動物保護団体で、1993年の創立以来、積極的に「中国のクマ救出」運動を行っています。2000年には、クマ牧場を中国から完全になくすことを目標とした合意書を北京政府と交わし、四川省成都に「クマ救護センター」を設立しました。「クマ救護センター」は、これまで137頭のクマを収容し、傷ついたクマたちのリハビリテーションにあたっています。中国のクマの救出運動は、AAF以外にも「世界自然保護基金(WWF)」、「国際動物福祉基金 (IFAW) 」 、「世界動物保護協会(WSPA)」など世界各地の動物保護団体が取り組んでおり、その結果、中国政府もクマ牧場廃止に積極的にのり出すようになりました。また、「熊膽の処方・使用を止め、他の植物成分で代替すべきだ」と提唱する中国人漢方医も増えてきました。
冒頭の記事にあるクマが、四年前、河北省当局によって保護されたのも、こうした背景によるものと思われます。実際に、新聞の取材に対し、当時保護にあたった河北省の担当者は「四年前保護した時に、クマたちには胆汁を採取された後があった」と語っています。
まだまだ悲惨な状況下にあるクマは多いとはいえ、AAFをはじめとする動物保護団体のキャンペーンによって、事態は少しづつ改善されてきているのですが、「熊の胆」最大消費国の一つである日本からキャンペーンに参加する人・団体が少ないというのは残念です。
日本では、NPO「野生生物保全論研究会(JWCS)」が、日本での「熊の胆」使用の実態を調査し、「クマ保護キャンペーン」を行っていますので、関心のある方はそちらを御覧下さい。こちらの「クマ保護キャンペーン」は、日本のクマに対するもののようですが、中国のクマの現状も少しですが知ることができます。
AAF繁体字サイトの表紙には、檻に閉じこめられた小さなクマの写真が掲載されていて、その下に中国語でこう書かれています。
「想像してみて下さい。生まれたばかりのあなたが、母親と強制的に離され、成長した後は、たった一人で小さな鉄の檻に閉じこめられて、お腹に穴を開けられ、胆汁を採取されたら。そして、それが年老いて死ぬ日まで続くとしたら……」
関連するURL/媒体
http://www.animalsasia.org/
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